複雑な心境です。ここ一カ月で仕掛けた檻に掛かったイノシシはこれで6頭目。イノシシは田んぼを荒らしお米を全滅させる、私にとっては天敵そのものです。檻にかかったイノシシは猟の規定で殺して穴を掘って埋めなければなりません。この一か月、これで6頭目の殺生です。
稲の天敵が一頭いなくなって私も村の人も助かることなんですが・・・。
複雑です。
もう50頭以上は仕留めているから慣れてる筈なのに、今日のこのイノシシは何かが特別でした。
檻に見つけた時は今までのイノシシとどこかが違って、とてもひょうきんな顔をしてました。
狙いを定めた一発目の槍は瞬間イノシシが大きく動いて肺に外れ、更に慎重に狙った2発目の槍で心臓を刺せた手応えがありました。何頭もやっているうちに心臓への手応えは分るようになります。
二発目で心臓命中ならいい方で、慣れていない人だとビビッて強く刺すことも、急所を刺すことも出来ません。結果多くの数回イノシシを刺し続けることになり、その分イノシシの苦痛も大きくなってしまいます。
ちゃんと心臓に命中させると、イノシシはあまり苦しまずほぼ即死させることができます。キュキュキュキュと痙攣してドテッと倒れた時にはほぼ死んでます。だから、暴れるイノシシを苦痛や恐怖が長時間に渡らないように、なるべく短時間で狙い、正確に心臓を突いてあげる、これがイノシシに対して唯一私のしてあげられることです・・・
ところが、このイノシシは心臓から血を吹き出し(今まで見たことがないほど)ながらも、なかなか息が絶えませんでした。・・そして、やっと最後に断末魔の「ぐ・ぐぁ~」という叫びと共に痙攣して死に至りました。「心臓を突いたのになぜ即死させられなかったのだ?苦しませて申し訳ない・・」そう感じながら、彼の苦痛を見守りながら、一生けん命に般若心経を唱えてました。
普通、イノシシは死ぬと目から生気が失せます。
このイノシシも死後硬直はすぐに始まったように見えましたが、何故か目の生気が抜けません。こんなイノシシは初めてです。死んだ目をしていないのです。こうなると目だけが生きていて、ムクッと生き返るような気がしてなりません。そんなことになれば勿論危険だし、何よりどうにも気持ち悪く、いつもは使わないロープをそのイノシシの足に引っ掛け檻から死体を引きづり出そうとしますが上手くいきません。
結局いつも通り手で前両足を持って埋める穴まで引いていきました。
重いですイノシシは。
そう感じるのはイノシシの体重だけではないような気がしてきます。
しばらく檻は仕掛けたくない気分です。
あぁ、これも・・お米作り。
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