「カムカムミニキーナ」もお気に入りの劇団の一つでした。「カムカムミニキーナ」という劇団名、気づいた人は知能指数が高いですね。訳すと「来て来て観においで」うまくできてます。
脚本家は奈良出身の方でした。
当時観客に配られた脚本家のお便りにこんなのがありました。ずっと宝物のように大事にしてたけど、今ではどこに行ったのかわかなくなってしまいました。
~~以下その脚本家さんの文章を思い出して~~
僕の出身、奈良は笑いのレベルが非常に高い地域だ。
それなのに、東京に出て劇団を作り何本も脚本を書いたけれど、東京の雑踏に負けてどんどん自分は面白くなくなってきているような気がする。僕が奈良で鍛えられた笑いの文化はこんなものではなかったはずだ。
知る人は少ないが、奈良の東大寺の地下にはお笑い虎の穴がある。
東大寺に通じる階段、下から三段目一番右の石段をずらすと東大寺地下につながる階段があるのだ。
ここには関西一円から笑いの天才と評される子供たちが集められ、命を懸けた笑い特訓をする秘密道場があるのだ。
各地から連れてこられた笑いの天才たちは、狭い地下室で笑いの天才同士が一対一で笑わせ合わねばならない。な~んだ、よくあるお笑い道場か、と思ってはいけない。
そこは笑いの才能を認められた子供たちのみが集められる特別な場所。虎の穴。
この地下室には薄い毒ガスが充満させられているのだ。
もしも相手が面白い話をすると笑ってしまう。「ククック」これがいけない。笑えばその結果、薄いとはいえ毒ガスをわずかながら吸ってしまう。だから、ここでは何とか自分は笑わずに先に相手を笑わせてなくてはならない。
この地下室は、まさに命を懸けた笑いの真剣勝負の場なのだ。
笑ってしまった子供は笑いながら薄い毒ガスを吸って体が弱っていく。だが、「クックック」ちょっと笑ってちょっと毒ガスを吸ったくらいでは死なない。だからこちらにもチャンスはある。簡単には笑わない相手を何とか「クククッ」と笑わせ毒ガスをユルリと吸い込ませるネタ数勝負もよし、「ガハハハ!」と大笑いさせて大きく息を吸わせる一発大逆転を狙う者もいる。
いずれにしても笑ってしまった者は、笑いながら体がどんどん弱っていく。大笑いなら一発で致命傷。敗者は「笑いながら」死んでいく運命なのだ。
そして笑いながら死んでいった子供たちは、一年に一度奈良の大文字に焼きで荼毘に付される。「ああ、きれいね」とみんなが言っている奈良の大文字焼きはそうした悲しい敗者の笑いの炎なのだ。
そう、奈良や関西に芸人や面白い人が多いのは、そうして笑いながら死んでいった仲間たちの屍を乗り越えてきた笑いの修行のお蔭だ。
関東の生ぬるい笑いとは元々次元が違う。
僕は、そんな東大寺の地下室、笑いの才能を見込まれ仲間を笑わせ、あまたの屍を乗り越え、虎の穴を生き残った一人ではないか。・・なのに東京に出て、僕はどこにでもいるような、こじんまりと面白くない脚本家に成り下がってしまってはいないだろうか?
そうだ、この夏は奈良に帰ってあの大文字焼きをもう一度見に行こう。あの炎をしっかり目に焼き付けてもっと面白い脚本家になってやろうと思う。
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