自分の田んぼだけでなく村中の稲刈りをする。
だから数えられないほど多くの田んぼの癖や
特徴を村中で私が一番知っている。
よくできる田んぼ、ぬかるむ田んぼ、
形のいい田んぼ、作業しやすいしにくい、
日当たりがいい悪い、水が冷たい温かい田んぼ。

そんな多くの記憶と長年お米を作り続けてきた
田んぼが高齢化でどんどん放棄されていく。

この田んぼも今日の稲刈り終了をもって
長らくお米を作ってきた役目と歴史を
永遠に終える。

放棄された田んぼは人が手をかけなければ
一年で草むらになり3年も経てば
かつてそこが田んぼだったことすらも
わからないほど荒れ果て山に帰っていく。

これまでにどれほど役目を終えていく
田んぼを目にしてきたろう。
これからどれだけの田んぼが役目を
終えるのを目にするだろう。

私には日本中の田舎の盛衰は
その地域の田んぼを見れば一目でわかる。
営みが消え風景が変わり人の心も変わる、
いや、営みが消えれば人はいなくなる。

26年前この村に来た時の人口は650人、
今では200人ほど。

時。時間。時代。時空。
時は全てを支配しているのか。