プライドレス

細い山道では、後から来る速いペースの人に
道を譲って抜いてもらう。
これまで私を抜いて行った人は数知れず、
逆にお先にどうぞと譲られた記憶はない。
つまり私のペースは誰よりも遅い。

トレイルランをしてる人はジェット戦闘機
の様な人種なので言うに及ばず。
保育園児や小学生が飛び跳ねるように
私を抜き去って行く。(どんな筋肉)
女子大学生のグループが音もなく
私を抜き去って行く。(足の速い托鉢か)
若いカップルが楽しげに大笑いしながら
私を抜いて行く。(どんな肺活量してんだ)
70代のお兄さん、お姉さんがスタスタスタと
私を追い抜いて行く。(既に解脱しているのか)
赤ちゃんを背負子に乗せた若いお母さんが
私を追い越して行く。(絶対転ばないで)
どう見てもヨボヨボで登山用ストックが
杖にしか見えないお爺さんに追いつけない。
(杖にジェットエンジン内蔵してんのか)

プライドレス…

私は中学では森田健作に憧れ剣道部。
高校ではフィールドホッケー部のキャプテン、
大学ではアイスホッケー部の副キャプテン、
アメリカではアイスホッケーチームを作り、
前職YMCAでは何度も、沢山の子供達を連れて 
2-3000m級の山々を相手に山小屋泊しながら縦走してた(それが仕事だった)。
運動神経も根性も人並みにある。

ところが今、たった300mの山登りで
今までのプライドも体力も全く通用しない。
気持ちいいほど清々しいほどに通用しない。
よく考えたら無理もない。
私のプライドも体力も経験もぜ〜んぶ
遠く30年以上前のことだった!

例え高級車に乗ろうと株で儲かろうと
大統領だろうと人間国宝だろうと
地位も名誉もお金も全く通用しない。
ただ自分の足で歩く、登る、下る。
コンビニもデパートもレストランも
タクシーもグリーン車もない。
山の上で私は社長だとか威張る奴はいない。
全くなんて平等な世界だろうと思う。

ただ、
山登りしてみてみんなが着たり
身につけつるものが決まって見事に
ノースフェースかモンベル、パタゴニアの
高価なメーカー品ばかりだと知った。
それくらいなら私だってヤフオクか
メルカリで揃えられる(笑