思えば遠くに

「太陽に吠えろ」に憧れて育った世代。
アメリカ留学中はFBIや州警察、郡警察を
見て回り帰国後迷わず警視庁警察官になった。


今回ネットで見つけたこの本は
警視庁受験直前に読んだ懐かしい
組織内部の暴露本。1988年。

就職前にちゃんと警察の悪い所も知って
「こりゃひどい!警視庁4万人の組織を
オレが少しでも変えてやるんだ」と
今からしたらあり得ない理想を
胸に思い描いていたあの頃。

そこそこ頑張って警察学校でも所轄でも
私は成績も検挙率もほぼトップだった。
今思い返してみても警察官は天職だと
思っている。

誰よりもたくさん捕まえたけど
その分人より早く警察内部の悪事も
沢山見てしまった。

「はい、警察想像以上に悪いです」

この本の通り良からぬ事がたくさんあって、
でもそれは4万人の巨大組織ではまかり通る
常識で罪の意識も異常さも自浄能力もない。
今では警察に限らずどんな大きな組織でも
だいたい人は同じようになるんだろうなと。

いろいろあったけど辞める直接のきっかけに
なったのは、ある犯人を捕まえた時に
上司が(私のことを思って)調書をもっと重い
罪に書き換えなさいと提案してきたこと。

つまり冤罪のススメ。

その時「なんてこと言う上司だ💢」とは
ならなかった。
その代わり、不思議なことに
なぜか鮮明な画像が頭に浮かんだ。

それは、あと数年後に今その上司が
私にススメている事をそっくりそのまま
後輩の警官に私がススメてる姿。
それが想像じゃなくハッキリ鮮明な
画像として浮かんで心底ビックリした。

「あ。ボクはここにいてはイケナイ。。」

辞めないでいれば今頃は署長くらいには
なれてたと思う。そのつもりで頑張ってた。

上に媚びを売り、成績を挙げ、嗅覚で
組織の真ん中に近づき、多くの部下を従え、
表面ではチヤホヤされ、裏金をこしらえ、
その金でもっと偉い人を接待し、
もっと重要なポジションに引き上げてもらう。
そう割り切ることができてしまえさえすれば
そんなに難しいことだとは今でも思えない。

でも「だからなんだよ」と今なら思える。
そんな思考回路なら自分より先を行く奴に
嫉妬したり足を引っ張ったりしたに違いない。
国会議員しかり、地位が上だとみんなが
幻想してる人が幸せだとは限らない。
むしろ孤独は深いかもしれない。

30数年ぶりに手にしたこの本。
思えば随分と遠くにきたものだ〜。