馬と島原

島原の嫁さん一族への娘夫婦の披露目会も
無事に終え岐阜への帰途につく。

さて、島原半島は以前は馬の一大産地だった。
戦時中は数多くの軍馬が徴用され戦地に
送られて行って二度と日本に戻って
来ることはなかった。

島原の馬の生産は戦後も続き各地に馬の市場が
開かれて、優等な馬を育てた飼育者が
品評会で誇らしげに愛馬と写っている写真が
数多く残っている。

そんな馬の生産が盛んだった半島も
トラクターや自動車の普及で一挙に衰退する。
その盛衰は「長崎県の馬」という本に詳しい。
なんの世界でもそうだけど一産業や地域が
急速に衰退しそこにまつわる文化や風俗、歴史
もろとも消滅していく様はじつに寂しい。

さて、私は17年間馬を飼っていたから
馬への思い入れは人一倍。
島原の馬の痕跡を調べては
もう何箇所訪ねたことだろう。

徴用され名誉の戦死をした軍馬の墓が
騎兵や輜重兵のそれに寄り添うように
建っていることも少なくない。
中には「●●號の墓」と戦死した軍馬の名前と
戦死した場所や所属部隊名、馬の顔の
レリーフがリアルに墓石に浮き彫りにされ
その上には陸軍の象徴である星が金色に
輝いているものまである。

今では馬も馬を飼育していた農家も
なくなってしまったけれど、かつての島原の
人たちがどれほど馬を愛したのかは
馬の痕跡を丁寧に訪ねてみると
私には痛いほどわかる。

ここは山の上のカフェ。
うれしいことに馬が2頭いた。
かつて飼っていた愛馬うららを
思い出しながら優しく撫でてお話しした。